トゥールビヨンとは
機械式時計の歩度を決める中心は、往復運動するテンプとヒゲゼンマイ、そして輪列の力を一定間隔で解放する脱進機です。部品の重心や調整にわずかな偏りがあれば、時計を置く向きによって進み方が変わります。懐中時計はポケットの中で縦姿勢になりやすく、その姿勢差が長く積み重なることが課題でした。
アブラアン-ルイ・ブレゲは、テンプと脱進機をケージへ載せ、ケージ自体を回す方法を考えました。ある向きで進み、反対側で遅れる傾向があれば、一周の中で互いを平均化できる。これがトゥールビヨンの出発点です。
重力をなくす機構ではない
ケージが回っても重力は働き続けます。変えるのは、調速機が重力に対して向く方向です。したがって、トゥールビヨンを搭載すれば自動的に高精度になる、という理解は正しくありません。
腕時計は着用中に姿勢が絶えず変わります。ケージの軽さと剛性、ヒゲゼンマイの状態は精度に関わります。輪列から届くトルクと、組み立て後の調整も同様です。機構名と実測精度は分けて見ます。